2012年8月1日水曜日

Radio K.A.O.S.

ほい!今日は前日に引き続き、Roger WatersのAlbum Collection (BOX)に収録された作品の紹介をしていきます。今回はフロイド脱退後のソロ作品としては2作目にあたる「Radio K.A.O.S.」ですね。


・「Radio K.A.O.S.」 リリース:1987年


 えー、突然ではありますが、まずこの作品を語る前に前作「ヒッチハイクの賛否両論(1984年)」以降の彼の活動を考えなければなりません。ロジャーは1986年に「When the Wind Blows(邦題:風が吹くとき)」という絵本をアニメ映画化する際に、そのサウンドトラックを担当しています。主題歌はDavid Bowieが手がけたようです。

 そしてこのアニメ作品のストーリー自体がかなり深刻なものであり、「主人公は、イギリスの片田舎で静かな年金生活を送っている老夫婦のジムとヒルダ。しかし、世界情勢は日に日に悪化していき、ある日核戦争が勃発する。二人は政府が発行したパンフレットに従って、保存食を用意しシェルターを作るなどの準備を始める。そして突然、ラジオから3分後に核ミサイルが飛来すると告げられる。命からがらシェルターに逃げ込んだ2人はなんとか難を逃れるが、放射線が徐々に2人を蝕んでいく。政府からの救援が来ると信じてやまない彼らは、互いを励まし合いながらも次第に衰弱していく」というものです(Wikipediaより抜粋)。

 このアニメ作品における彼の音楽活動は、彼のソロアルバムに強く影響を与える事となりました。元々「Animals」以降のフロイドにおいて、政治的メッセージを作品に織り込むのがロジャー曲の特徴でしたが、これ以降はその傾向がますます強くなっていきます。


 その結果作られた本作品「Radio K.A.O.S.」は、前作とは違って政治的主張の強いコンセプトアルバムとして完成しました。アルバムストーリーは、「身体的障害を生まれつき持った青年ビリーは、双子の兄に支えられて暮らしてきたが、ある日、兄が殺人事件で命を落としてしまう。悲しみに暮れるビリーは叔父のところへ預けられて生活する事になったが、そこで自分は世界中のラジオ電波と交信できるという超能力を持っている事に気づく。そして様々な電波と交信していくうちに、電波を利用して人々をコントロールしようと企む権力者の存在をも知ってしまう。ビリーは、「Radio K.A.O.S.」という名の架空のラジオ局が様々な革新的な試みを行っている事を知り、彼らにコンタクトをとって権力者の陰謀に立ち向かうのだった・・・」というかなりぶっ飛んだものであります。


 こうして見てみると、フロイド在籍時代や前作「ヒッチハイクの賛否両論」で培われたコンセプトアルバムというお得意の形を土台に、「風が吹くとき」のサントラ製作の影響である政治批判というメッセージ性を上手く昇華して乗っけているのが分かります。自身の完全なソロ作品ではないですが。「風が吹くとき」の続編と捉える事も出来ない訳ではありません。


 しかし、サウンドに関しては従来の彼の作品とは一線を画すものになっているのが特徴です。1曲目からシンセサイザーのデジタルシーケンスが飛び出します。これにはラジオ媒体という作品テーマと当時の音楽シーンの影響が如実に表れています。そのサウンドのせいか、ポップな曲もいくつかあり、おそらくというか確実にロジャーのソロ作品の中では唯一ポップな作品と言えるでしょうねwww
おっ!と思える良曲もいくつかあります。個人的には「Radio Waves」、「Who Needs Information」、「The Tide Is Turning (After Live Aid)」などがオススメです。


 とはいえ、あまりに難解なテーマ(歌詞だけではリスナーが理解できないため、ロジャー本人がブックレットに作品の解説をつけたほど)や、サウンドとは対照的な暗く重い内容が災いしたのか、アルバムセールスは散々たる結果となりました。同時期にロジャー以外のメンバー(デヴィッド・ギルモア、リック・ライト、ニック・メイスン)がPink Floydを再始動させてニューアルバム「鬱」をリリースし、その売り上げ対決が注目されていましたが、勝負にすらならないほど・・・。両者はライブツアーの観客動員数でも勝負しましたが、新生フロイドの圧勝に終わります。結果、これが相当にショックだったらしく、ロジャーは1999年までツアーに出る事を止めてしまいました。


 うーん、たしかに身体障害を持った青年という設定はThe Whoの「Tommy」に通じるところがあるし、ストーリーが大味な気もしなくはないですが、サウンドだけ見たら、まぁ割ととっつきやすいほうだとは思うのですが・・・。曲のクオリティも決して悪くないと思うし、もう少し評価されても良いのでは・・・?

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