2014年5月17日土曜日

Journeyman / Eric Clapton (Audio Fidelity Hybrid SACD Remaster)


5/6に発売され、発売初日にAmazonでポチったのが翌日届いていました。今回はそれのレビューです。
本作はEric Claptonが1989年にリリースした「Journeyman」というアルバムなのだけれど、それをAudio Fidelityというアメリカのレーベルが、名エンジニア、スティーブ・ホフマンの手によって独自にリマスタリングを施したのが今回の商品。


Audio Fidelityは、同系統のレーベル、Mobile Fidelityと並んで「音楽ジャンルやアーティストを問わず、マスター音源を借りて独自にリマスタリングをして限定リリース」する、ちょっと変わった高音質作品をリリースし続けるレーベルで、自分はこれまでに同レーベルだとThe Beach Boysの「Pet Sounds」やSimon & Garfunkelの「Parsley Sage, Rosemary and Thyme」などを買ってきた。

本作はリマスタリング以外にもハイブリッドSACDということで、現時点で留学先にSACD再生環境はないものの、帰国後は実家でいけるということで、今回は通常のCD面の感想。本作の一番の魅力であるSACD面は帰国後ということで。

けれど、とりあえず2周くらいアルバムを聴いてみて最初に思うのは、既発の同作に比べて音圧が低めになっている。これはAudio Fidelityのリマスター作品全般によくある傾向。けれどこれは決して悪いことではなくて、むしろ既発の同作は音圧が高すぎた。80年代のクラプトンはシンセサイザーなどを取り入れてくるんだけれど、既発の同作の音は、ステレオで左右に割り振られたシンセの音があまりに食い気味で、中央に配置されたエレキベースの音が殺されて隠れてしまっていた。Bad Loveなんてその一番の犠牲者。本アルバムのベースは全部で3人が起用されているのだが、ネーザン・イースト、ピノ・パラディーノ、ダリル・ジョーンズという有名ベーシスト達が使われているのにもかかわらず、ベースがシンセに食われて消えるというのはあまりにもったいない。

また、同じBad Loveでは、既発の音は中央から聞こえてくるスネアの音がかなりキンキンしていて聴き心地が悪かったのだけれど、今回のリマスターでそれも解消されている。

アルバム全体を通して、音の角がとれて丸くなった印象を受ける。マイルドな感じ。かつ出すべき音はしっかり出して、それぞれの楽器の音の調和がきちんと取れている。さすがはスティーブ・ホフマンといった印象。

クラプトンの本作は、彼のキャリアを考えると、80年代という時代を感じさせるような多少派手なサウンドではあるものの、他の同時代のアーティストに比べると、あくまで「流行りのサウンドちょっと取り入れてみたよ」程度な感じなので、既発のようにあまりに派手なサウンドメイキングにするとかえってクラプトンらしさが損なわれていた。収録内容がいろんな有名アーティストと共演した曲ばかりなので、本来各曲のバラエティに富んでいるはずなのに、一律に過剰装飾だった。しかし今回のリマスターで良い感じに「クラプトンらしい」サウンドが復活したように感じた。Old Loveのロバート・クレイ?のギターソロなんて本当に暖かくなったなぁと感じる。Breaking Pointのフィル・コリンズのドラムもマイルドでありながら太く芯がある。ジョージ・ハリスン作曲の「Run So Far」なんて今回のリマスター効果にぴったり。

というわけで一番気になるSACD面はまだお預けだけれど、CD面でもこれだけ満足できたことだから、SACD面はもっとすごいに違いない。なお、限定リリースのナンバリングは#1287でした〜。たしか5000枚限定だったかな。後、ディスクトレイの下に本作のオリジナル?と思われるLPの写真が載っていました。