2012年3月3日土曜日

Boston 1976

えー、つい先日すんごいブートを入手してしまいました。「Boston 1976」というタイトルのブートで、The Whoが1976年3月9日と4月1日に行ったボストン公演の模様を両日収録したものになります。とにかく度肝を抜かれたブートなので、ご紹介しなければと思った次第であります。


「Boston 1976」  プレス2CD  録音:AUD/A+


Disc 1
1, I Can't Explain
2, Substitute
3, Keith Moon Passes Out
4, I Can't Explain
5, Substitute
6, My Wife
7, Baba O'Riley
8, Squeeze Box
9, Behind Blue Eyes
10, Dreaming From The Waist
11, Magic Bus

Disc 2
1, Amazing Journey
2, Sparks
3, Acid Queen
4, Fiddle About
5, Pinball Wizard
6, I'm Free
7, Tommy's Holiday Camp
8, We're Not Gonna Take It/See Me,Feel Me
9, Summertime Blues
10, My Generation/Join Together Blues
11, Won't Get Fooled Again


この公演は上述の通り、2つの公演を収録したブートになりますが、3月9日の方のライブはDisc 1の最初の2曲のみです。どういう事か理由を説明しますと、元々4月1日の方のライブは予定されていなかったのです。実は3月9日のライブで、2曲目の「Substitute」の演奏を終えた時に、ドラムのキース・ムーンがドラッグのオーバー・ドーズで倒れてしまい、ライブが中止になってしまったからなんですね。4月1日のライブはそのお詫びとしての振替ライブに当たります。このブートではその生々しい緊迫した状況をリアルに捉えています。1曲目の「I Can't Explain」は何事もなさそうな演奏なのですが、「Substitute」を演奏し始めた直後にいきなりキースのドラムのテンポがガクッと落ちて、かなりもたった演奏になってしまいます。そのテンポのまま一応曲を演奏し終えるのですが、直後キースが気絶してしまいます。このブートではオーディエンスの話し声も鮮明に捉えており、「ドラマーがいなくなったぞ!」「あいつ気絶してやがる!」「キースが倒れたんだ!」などの会話が聞こえます。会場がブーイングとともにかなり緊迫した状態になっているのが聴いていてすぐ分かります。それから一旦録音が切れて、ボーカルのロジャー・ダルトリーがステージに出てきて状況を説明するところから録音が再開されています。ロジャーは「キースがインフルエンザで倒れた。申し訳ないがこれ以上ライブを続ける事が出来ない。戻ってきて振替公演を行う」(インフルな訳ねーだろw)と説明をし、大ブーイングのオーディエンスに謝罪しています。その後はオーディエンスの混乱したような会話が数分に渡って収録されており、そこで3月9日の方のライブの録音は終了しています。
その結果いかにもキースらしい事情で行われたのがもう一つの4月1日のライブです。こちらは、録音者のテープチェンジの瞬間を除いてはほぼ完全にライブが収録されています。


そして、このボストンでの特別な2つのライブを録音したのはダン・ランピンスキーという人物。彼が様々なアーティストの公演(主にアメリカ東海岸付近の都市でのライブ)を録音していたのは1974年頃〜1978年頃という短い期間なのですが、この人が録音したブートは凄まじく音質が良い事が多く、ブートマニアの中でも彼の録音は非常に重要視されています。その中でもThe Whoのこの2つの公演(特に4月1日の方)は特に音質が良く、ラインのサウンドボード音源と聴き間違えるようなクリアで広がりのあるステレオ録音は、1976年という年代を考慮しても本当に凄まじいです。彼がこの時期に録音したThe Whoの他のライブで有名なものには、1975年のスプリング・フィールド公演と1976年のプロヴィデンス公演が高音質音源として残されていますが、このボストン公演の驚異的な音質は、その両者の音質を軽く一蹴するレベルと言えますね。低音から高音まできっちり録られています。音が潰れてしまったり、遠くなったりするような状況もほとんどありません。


さらにこのライブを特別なものにしているのは、なんといってもバンドの出来。特にキース・ムーン!!汚名挽回と言わんばかりに1曲目の「I Can't Explain」から叩く叩く!ドカドカバカバカとドラムを打ち鳴らす彼のこの日の出来は、同年の彼の他のライブと比べてみてもパーフェクトな出来と言えますね。「Baba O'Riley」などでよくある彼のドラムのもたつきもこの日は皆無で、鋭いフィルインを随所でかましてきます。よく『キース・ムーンは確かに天才的なドラマーだけど、「Who's Next」をリリースした1971年以降、彼のドラムテクは格段に落ちていった」などと言われていますが、この日の彼のプレイはまさに「天才キース・ムーン」にふさわしいものだと断言できますよ!ツーバスを連打しながら彼の周りに無数に並べられたタムを縦横無尽に叩きまくっています。ラスト曲「Won't Get Fooled Again」のラストの彼のドラムソロもいつも以上に激しく叩いているのが分かりますね。
そして、そんなバンドの出来に答えるかのようにオーディエンスも超盛り上がっています。「My Wife」ではオーディエンスの一人が “It's so spectacular!”と叫んでいるのが印象的です。またBaba O'Rileyを演奏し終えるとロジャーが「こんなに大きい歓声は今ツアーで一番だ!」と発言しています。
もちろんギターのピート・タウンゼントとベースのジョン・エントウィッスルのマジキチな演奏も健在。「Magic Bus」や「Sparks」、「My Generation」では、キースのドラムと共に彼らのアドリブ満載の演奏を楽しむ事が出来ます。


ちなみに、4月1日の公演に関しては、ラスト3曲のみダン・ランピンスキーの録音ではありません。この日を別音源で収録したブート「Behind Blind Eyes」の音源を使って補填しています。ダン・ランピンスキーの録音に比べると少し音質が落ちますが、それでも十分に高音質で聴きやすい音源ですね。


そして欠点と言えるかどうか分かりませんが、「My Generation〜Join Together Blues」のメドレーの部分では珍事件が。「My Generation」から「Join Together Blues」に演奏が移ったところでなぜかいきなりピートが激怒。怒鳴って他のメンバーの演奏を止めさせます。キースなどと少しの間口論しているのが聴き取れます(しかしオーディエンスはそんな事おかまいなしに盛り上がってますww)。その後は何事もなかったかのように「Join Together Blues」の演奏を再開。そこのアレンジもいつものメドレーと異なっている点がいくつもあり、非常に興味深いです。



The Whoのライブ・ヒストリー史上重要な記録とその後の名演が、超がつくほどの高音質オーディエンス録音で楽しめ、しかもプレスCDで収録されているとあれば、買うしかありません。本当に完璧なタイトルです。僕自身、このタイトルは自分が持っているoasisなどの他のアーティストのブートや音源を含めても段違いでトップだと考えています。買ってから数日経ったんですが、何回も何回も聴き直してます。文句の付けようがマジでないんですよ。残っている枚数がかなり少なくなってきているようなので、お早めの入手をオススメします。

4月1日の公演は、どこをとっても出来が良いのですが、特におすすめトラックを挙げるとするならば、「My Wife」、「Baba O'Riley」、「Magic Bus」、「Sparks」、「My Generation/Join Together Blues」、「Won't Get Fooled Again」ですかね。この日の主役、キース・ムーンのプレイが存分に味わえますよ。

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